いつかの記憶
恵比寿のとあるビルの地下の階段をおりる。
「あれ、このお店、来たことある。」
階段の先のドアを見ながら、そしてお店に入った瞬間の雰囲気でそう感じた。
いつだろう、だれとだろう。なんの食事だったんだろう。
私ひとり、いつかの記憶を追いかけながらも
食事を注文して、食事をする。
傍から見れば、仲のよい二人がわいわい食事を楽しんでいるように見えるかもしれない。
でも、私の心の中は
なんとなく、思い出深い人との食事できたお店かもしれないという思惑と、
そしてタイムスリップしていま、目の前にあの人がいたら、どうする?みたいな妄想のみ。
さらに私の記憶をはっきりとさせたのは、
デザートのメニューを見たとき。
なんてこのお店は変わっていないんだろう。
メニューは、あのときのまま。
まるで、まるであの時に戻ったかのよう。
あのときに戻っている。
メニューを手に持ってお店にいる私はあのときの私と同じはず。
確かに一緒にいる人も違うし、いまという瞬間も違う。
だけど、
なぜかちょっと嬉しかった。
思い出に触れられた気がしたから?
お店が昔のままだったから?
忘れていた記憶を見つけ出したから?
でもやっぱり涙がでそう。
たぶんわたしはまた泣くと思う。